営業企画3年目で見えてきたこと
中堅メーカーの営業企画部に配属されてから、私の主戦場はExcelとPowerPointでした。月次の売上集計、地域別・商品別のクロス分析、営業会議用のレポート作成。マクロを書き、ピボットテーブルを組み、結果を物語にして役員に説明する仕事を3年続けてきました。
非エンジニアとしてはExcel力は社内屈指の自信があり、営業現場の課題感もよく理解していました。一方で、社長直轄でDX推進室が新設されると聞いたとき、「ここに自分が入らずにDXが成功するわけがない」と直感的に思ったのです。
ITの知識はゼロに近い。けれど、現場の痛みと顧客の声がわかる人材としてDXを担うべきだ、という確信だけはありました。
「DXって結局なに?」という最初の壁
異動希望を出したとき、上司から「DXって何をすることなのか、自分の言葉で説明できる?」と聞かれて、答えに詰まりました。「デジタルでトランスフォーメーションすること」と言いかけて、自分でも何も言っていないことに気づき、口を閉じました。
DXに関する書籍を片っ端から手に取りましたが、抽象論ばかりでなかなか手がかりが掴めません。最初に読み切れたのが『いちばんやさしいDXの教本』でした。事例ベースで「業務のデジタル化」「業務プロセスの再設計」「ビジネスモデル変革」の3層を整理してくれていて、私の現場の悩みがどの層の話なのかを言語化できるようになりました。
『DXの教科書』では戦略・体制・推進ステップが体系化されており、社内の議論で使う共通言語を入手できました。
ITの基礎リテラシーをゼロから
DX推進担当になるためには、最低限のIT用語を「翻訳できる」状態にしないと、ベンダー会議で蚊帳の外になることがわかっていました。『〔図解〕世界一わかりやすいIT用語の教科書』に類する基礎本を選び、サーバー、ネットワーク、データベース、API、クラウドの基本構造を、現場のExcel業務に重ねながら理解しました。
『アフターデジタル』は、DXの本質が「業務効率化」ではなく「顧客接点のオフライン/オンライン融合」だと教えてくれた一冊です。中国のOMO事例は、自社の営業現場(店舗+EC+営業所)のあり方を考え直すヒントになりました。
データ活用は『ゼロからわかるデータ活用』で、CRM/SFAのデータをどう蓄積し、どう分析に活かすかを実務目線で整理しました。
現場改善で実績を作る
異動が確定する前に、私は自分の手の届く範囲で「小さなDX」をいくつか実行しました。営業日報の入力をExcelからkintoneに移し、入力時間を半分にする。商談履歴をSalesforce上に統一する。手作業の月次レポートをPower BIに自動化する。
このとき、『図解 RPAビジネス活用入門』を参考に、社内のRPAライセンスを使って受注処理の一部をUiPathで自動化しました。「コードは書けないが、業務を分解して自動化候補を見つけられる人」というポジションが、自分の強みになりつつありました。
『AIビジネス活用大全』は、生成AI時代に営業企画として何をすべきかを考えるうえで重要でした。商談議事録の要約、提案書ドラフトの自動生成、顧客セグメンテーション。これらを「実装する人」ではなく「使いこなしを設計する人」として動くイメージが固まりました。
DX推進室での最初の仕事
異動が叶ってから、私が最初に任されたのは「営業現場のDXロードマップ作成」でした。技術的にはエンジニアの先輩がリードしますが、現場ヒアリング、業務フロー可視化、ROI試算は私の仕事です。
3年間のExcel仕事で培ったデータの取り扱い感覚と、営業所100箇所への顔の広さは、ここで決定的な武器になりました。「現場が動かないDXは絵に描いた餅」という当たり前のことを、言葉だけでなく実行できる人材は、社内でも希少だと評価されています。
ビジネス側からDXを目指す人へ
DX推進担当という職種に必要なのは、最先端の技術知識ではなく、「現場の痛み」と「テクノロジーの可能性」を翻訳する力です。私の場合は、ITの基礎リテラシーを最低限まで上げ、その上で営業企画3年分の現場知をフル活用するという戦略を取りました。エンジニアにはない「業務側の言葉で語れる」という資産は、DX推進室では何にも代えがたい武器になります。
技術書を10冊読むより、自社の業務フローを1つでも図に描き、改善後の姿を提案できる方が、DX推進の現場では遥かに価値があると感じます。最初の小さな改善は、たとえばExcelで2日かかっている集計をPower Automateで自動化する、というレベルで十分です。手応えのある成功体験を1つ作れた人だけが、次の大きなDXに踏み出せると私は考えています。
